「おもしろさ」をフックに、社会課題に触れてもらう
まずは、みなさんのお仕事や担当領域について教えてください。
藤川キリンではCSVといって、社会課題の解決に取り組むことで社会的価値と経済的価値の両方を創り出していこうという経営戦略を採用しています。
私はCSV戦略部の部長として、キリンのサステナビリティに関する発信にいろいろと試行錯誤しているところです。昨今は動画メディアが世間に与える影響の大きさをますます感じていることもあって、本日は「RICEメディア」のお2人とお話できることをとても楽しみにしていました。
廣瀬ありがとうございます。今の世の中はSNSの普及もあって情報にあふれていますが、人が処理できる情報量は限られているので、自分ごとにしにくい社会課題の情報は後回しにされてしまいがちです。だから、どんな人でも思わず見たくなるおもしろいメディアがあれば、もっと社会に興味を持ってもらえるんじゃないかと考えて、2021年にRICEメディアを立ち上げました。
“日本一おもしろく社会を知れるメディア”というコンセプトで、主に1分間のショート動画で社会課題について発信しています。僕は普段「トム」と呼ばれていて、RICEメディアの創業者であり、動画の出演者でもあります。
糸井私は主に企画づくりやディレクションを担当しているのですが、それ以外にも企業のオウンドメディアで配信する動画を制作したり、コンサルティングのようなかたちでお手伝いすることもあります。
社会問題というのは当事者の方を応援するのも大切ですが、「困っている人のために何かしようとしている人」がもっと動きやすくなること、成果を出しやすくなることも大事だと思うんです。RICEメディアを通してさまざまな活動を発信することで、そういったことにつながればと考えています。
中川私は主にキリングループのCSVパーパス「コミュニティ」に関すること、地域とコミュニティの活性化に貢献する活動やその支援などに取り組んでいます。先ほど、RICEメディア立ち上げの動機についてお話いただきましたが、どんなふうにスタートしたのか経緯を詳しく聞かせてもらえますか?
廣瀬はい。僕にはもともとジャーナリストになりたいという夢があって、大学生の頃から社会問題に関わる活動をしていたんです。ただ、それだけではなかなか興味を持ってもらえないという現実を目の当たりにして「もっと大衆向けにとっつきやすいものにしないと」という思いが強くなり、自分で会社をつくりました。最初はニュースアプリや教育事業をやったりもしていましたが、2年半ほど期間をかけてようやくRICEメディアにいきついたんです。
RICEメディアという名前にしたのは、日本人にとっての主食であるお米ぐらい、社会課題を身近なものに変えたいという想いから。試食でも副食でもなく、主食になってほしくて命名しました。
中川なぜ、ショート動画で社会問題を伝えるという方法が「いちばん届きやすい」と感じたんですか?
廣瀬ネット検索やSNSでフォローしている情報って、あくまでその人の“興味の範囲内”ですが、ショート動画の登場によって、おすすめフィードを見る人が増えたんですね。つまり、「関心はあるけど調べるまではしない」っていう人たちにも届けられるようになった。それが僕たちのやりたいことにマッチしたんです。
社会問題に関心がない人でも、ショート動画やサムネイルを見て「なんか、おもしろそうだな」と手を止めてもらえる可能性がある。まず立ち止まってもらうフックとして“おもしろさ”は大事な要素だと思っています。