ソーシャルグッドな社会をつくるために。RICEメディアと考える社会課題の未来

Tomoshi Bito株式会社 RICEメディア 代表 / 廣瀬智之

Tomoshi Bito株式会社 RICEメディア 事業開発 / 糸井明日香

キリンホールディングス株式会社 常務執行役員 CSV戦略部長 / 藤川宏

キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部主査 / 中川紅子

公開日:2024年7月25日

内容、所属、役職等は公開時のものです

SDGsやCSV*といった言葉が広まってきた今、商品やサービスを選ぶうえで「ソーシャルグッドであること」は、“おいしさ”や“楽しさ”と同じくらい重要な要素になりつつあります。

※Creating Shared Value /社会的ニーズや社会問題の解決に取り組むことで社会的価値の創出と経済的価値の創出を実現し、成長の次なる推進力にしていくこと。

日常の裏側にある社会課題に目を向け、1分間のショート動画を通してユニークに発信する「RICEメディア」と、環境・災害・食品ロスなど、さまざまな社会課題の解決に取り組んできたキリン。これからやってくる未来に向けて、社会課題とどう向き合い、どう発信していくべきかを共に考える座談会を実施しました。

「RICEメディア」の廣瀬智之さんと糸井明日香さん、そしてキリンのCSV戦略部の藤川宏と中川紅子が、双方の視点から「企業とメディアにできること」を語り合います。

廣瀬智之

Tomoshi Bito株式会社 RICEメディア 代表

1995年生まれ。滋賀県出身。立命館大学卒。学生時代から報道写真家を志し、取材活動に取り組む。情報過多な現代において、社会的な発信が届きづらくなっている現状に課題意識を持ち、Tomoshi Bito株式会社を創業。社会課題をアイデアの力でわかりやすく、時におもしろく届ける発信「クリエイティブジャーナリズム」を掲げ、動画メディア「RICEメディア」を展開している。

糸井明日香

Tomoshi Bito株式会社 RICEメディア 事業開発

1998年生まれ。東京都出身。武蔵大学卒。「アルビノ」と呼ばれる先天性の遺伝子疾患を持って生まれる。学生時代は学校内のマイノリティや学費問題に関心を持ち、署名活動などを行う。1年間学童クラブで非常勤として働いたのち、立場の弱い人の声が聴かれる社会をつくりたいと思い、ボーダレス・ジャパンに入社。クラウドファンディング「For Good」で事業立ち上げを経験後、グループ内でTomoshi Bito株式会社へ異動。動画メディア「RICEメディア」にて事業開発を行っている。

藤川宏

キリンホールディングス株式会社 常務執行役員 CSV戦略部長

1987年にキリンビール株式会社に入社。営業・留学・マーケティング・秘書などを経験後、複数のM&A業務に携わり、キリングループの国際化に取り組む。豪州、シンガポール、ミャンマーなどに駐在し、各地でトップマネジメントに加わり、事業経営を経験。2017年からキリンホールディングス株式会社 人事総務部長、2019年からは3年間公益財団法人日本サッカー協会(JFA)への出向を経て、2022年3月末からCSV戦略部長。国内外のステークホルダーと信頼関係を築き、2027年にはキリングループを世界のCSV先進企業に成長させることを目指す。

中川紅子

キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部主査

ヘルスケアや医薬品のブランドマネージャーを経て、2012年キリンビール(現キリンホールディングス)に入社。ビール・RTD・スピリッツのカテゴリー/ブランドマネージメントやクラフトビール・シードルなどアルコールの新価値創造を担当。現在は、商品ブランディングから企業ブランディングに軸を置き、CSV活動を通じた社会と企業への価値創造を推進。とくに、「コミュニティ」における価値創造や企業コミュニケーションを担当。

01

「おもしろさ」をフックに、社会課題に触れてもらう

まずは、みなさんのお仕事や担当領域について教えてください。

藤川キリンではCSVといって、社会課題の解決に取り組むことで社会的価値と経済的価値の両方を創り出していこうという経営戦略を採用しています。

私はCSV戦略部の部長として、キリンのサステナビリティに関する発信にいろいろと試行錯誤しているところです。昨今は動画メディアが世間に与える影響の大きさをますます感じていることもあって、本日は「RICEメディア」のお2人とお話できることをとても楽しみにしていました。

廣瀬ありがとうございます。今の世の中はSNSの普及もあって情報にあふれていますが、人が処理できる情報量は限られているので、自分ごとにしにくい社会課題の情報は後回しにされてしまいがちです。だから、どんな人でも思わず見たくなるおもしろいメディアがあれば、もっと社会に興味を持ってもらえるんじゃないかと考えて、2021年にRICEメディアを立ち上げました。

“日本一おもしろく社会を知れるメディア”というコンセプトで、主に1分間のショート動画で社会課題について発信しています。僕は普段「トム」と呼ばれていて、RICEメディアの創業者であり、動画の出演者でもあります。

糸井私は主に企画づくりやディレクションを担当しているのですが、それ以外にも企業のオウンドメディアで配信する動画を制作したり、コンサルティングのようなかたちでお手伝いすることもあります。

社会問題というのは当事者の方を応援するのも大切ですが、「困っている人のために何かしようとしている人」がもっと動きやすくなること、成果を出しやすくなることも大事だと思うんです。RICEメディアを通してさまざまな活動を発信することで、そういったことにつながればと考えています。

中川私は主にキリングループのCSVパーパス「コミュニティ」に関すること、地域とコミュニティの活性化に貢献する活動やその支援などに取り組んでいます。先ほど、RICEメディア立ち上げの動機についてお話いただきましたが、どんなふうにスタートしたのか経緯を詳しく聞かせてもらえますか?

廣瀬はい。僕にはもともとジャーナリストになりたいという夢があって、大学生の頃から社会問題に関わる活動をしていたんです。ただ、それだけではなかなか興味を持ってもらえないという現実を目の当たりにして「もっと大衆向けにとっつきやすいものにしないと」という思いが強くなり、自分で会社をつくりました。最初はニュースアプリや教育事業をやったりもしていましたが、2年半ほど期間をかけてようやくRICEメディアにいきついたんです。

RICEメディアという名前にしたのは、日本人にとっての主食であるお米ぐらい、社会課題を身近なものに変えたいという想いから。試食でも副食でもなく、主食になってほしくて命名しました。

中川なぜ、ショート動画で社会問題を伝えるという方法が「いちばん届きやすい」と感じたんですか?

廣瀬ネット検索やSNSでフォローしている情報って、あくまでその人の“興味の範囲内”ですが、ショート動画の登場によって、おすすめフィードを見る人が増えたんですね。つまり、「関心はあるけど調べるまではしない」っていう人たちにも届けられるようになった。それが僕たちのやりたいことにマッチしたんです。

社会問題に関心がない人でも、ショート動画やサムネイルを見て「なんか、おもしろそうだな」と手を止めてもらえる可能性がある。まず立ち止まってもらうフックとして“おもしろさ”は大事な要素だと思っています。

02

普通の生活が社会貢献につながるような仕組みづくりを

社会課題といってもさまざまですが、企業やメディアとして何にフォーカスするか、どんな活動をしていくかというのは、どのように決めていますか?

藤川キリンはもともと飲料メーカーということもあり、本格的な環境への取り組みは1950~60年代くらいから始まっています。工場での排水処理などの公害対策に始まり、92年にリオで開催された地球サミットをきっかけに、地球全体の環境に配慮する方針へと進化していきました。

その後、事業が医薬やヘルスサイエンス領域にも広がっていき、震災の復興支援など情勢に合わせた社会課題にも取り組んできました。今は社会的価値と経済的価値をどちらも出していくCSV経営を指針としながら、酒類メーカーの責任を果たすことと、環境、健康、コミュニティの4つの社会課題解決に取り組んでいます。

2022年―2024年CSVコミットメント一覧

糸井RICEメディアでは、何を取り上げるかを決めるときに大事にしていることが2つあります。1つは「ユニークかどうか」。ただ紹介するだけじゃなく、みんなが知らない斬新でおもしろい切り口があるかどうかは、情報収集をするうえで常に気にしています。もう1つは「これが広がると本当に社会は良くなるのか?」という視点。上辺だけじゃない、本質的な取り組みなのかどうかを考えることも大切にしています。

中川RICEメディアさんの発信は、単純に動画としておもしろいものと、知識欲が満たせるようなおもしろさのものと、パターンがありますよね。

糸井そうなんです。社内では取材紹介系・企画系と呼んでいたりするのですが、誰かの活動を取材して紹介するパターンと、自分たちで検証したり体験してみるパターンの2種類があって。取材ものは学びコンテンツのようなイメージで、検証のほうはエンタメに寄せた感じになっています。

廣瀬最近は「ごみゼロの日」に向けて100kgゴミ拾いという企画をやって、昨日も深夜まで歌舞伎町でゴミを拾っていました(笑)。エンタメをどう社会課題に転用できるのか?ということをいつも考えているので、エンタメに関わるクリエイティブはいつもリサーチしています。

ただ、正直なところ、メディアとして成長しているという手応えはあっても、社会が大きく変わってきたという実感はまだなくて…。若い世代は課題意識が高いと言われますが、実はSNSの影響で可視化されやすいというだけで、実際はどの世代にも意識が高い人とそうじゃない人がいますから。

藤川メディアから情報を得るところから、実際の行動へとつなげていくには、さらに何ステップか必要なのかもしれませんね。動画で環境に関する興味を持つきっかけをつかんでも、企業の環境レポートまで読む人というのはなかなかいないでしょう。

最近はフェイクやグリーンウォッシュの問題もあって、どれが正しくてどれが偽物かという判断も難しい。一人ひとりが自信をもって行動に移すためのアクティビティティをいかに提供するか、私たちキリンも考えています。

中川社会課題は国や地域によってさまざまですし、情報が届いたとしても、そこから行動に移す難しさがありますよね。「SDGsについては知っているし、自分たちが動かなきゃいけないということも理解しているけれど、何をしていいかわからない」という声は実際によく聞きます。

そうなると、やっぱり日常のなかで使っている商品がサステナブルになっているという状態にする必要があると思っていて。わざわざ特別なことをするんじゃなく、普段の生活に溶け込むようなかたちで、社会や環境に貢献できるものをつくっていく。例えば日本では、ペットボトルの回収が当たり前で、その回収率は世界一です。それくらい当たり前の価値観や意識になるよう、さりげなく組み込んでいくことが近道なのかもしれませんね。

廣瀬僕もそれはめちゃくちゃ同意で、やっぱり仕組みにするのが大事だと思います。例えば18歳の意識調査データを見ると、「自分で社会を変えられる」と感じている日本の若者って、世界に比べて群を抜いて少ないんですよ。だけど、リサイクルのように「決められたルールを守る」ということへの理解はとても高い。なんとなく生きているだけでも社会貢献できるような仕組みをつくってあげることに、企業やメディアが力を注ぐ必要があるんじゃないでしょうか。

もっとたくさんの人を巻き込むためにも、僕たちがやっていきたいのは意識を上げることじゃなく、行動のハードルを下げていくことだと考えています。

03

伝えたいことは、言葉じゃなく商品が語ってくれる

社会課題を知ってもらうとき、「どのように伝えるか」は大事なポイントですよね。

廣瀬RICEメディアとしては、僕らが伝えたいことよりも「みんなが何を知りたいと思っているか?」という部分に集中しています。まずはその要求にしっかり答えながら、自分たちの言いたいことも一緒に届けていく。それはマーケティングにも近い考えだと思うので、キリンさんのような企業がどう考えているのかはすごく気になります。

中川キリンでは「商品で体現する」のが一番わかりやすい伝え方ですね。今年立ち上がった「氷結®mottainaiプロジェクト」もそうですが、メーカーとしては商品やサービスが企業の姿勢を語ってくれるというのが何より強い力になると思っています。事業を通して社会貢献ができれば、社会課題の解決にもなり、会社の成長にもつながります。

第一弾商品である『氷結®mottainai 浜なし(期間限定)』のCM(60秒ver.)では、「おいしいのに規格外になってしまう果物を知っていますか?」と、背景にある社会課題について説明をしています。そうやって知ってほしいことを伝えつつ、ただ「おいしい」という理由で楽しんでくれるだけでもいい。見る人の興味関心によって、いろんな受け取り方や選択肢があっていいと考えてつくりました。

糸井ちょうど先日、「氷結®mottainaiプロジェクト」の動画でフードロス削減や農家さんへの支援などを知り、「RICEメディアでも紹介したい!」って盛り上がっていたんです。

藤川ありがとうございます。トムさんが言うように、「相手が何を知りたいか」が先にないと、何も響かないですよね。キリンの容器や包装のことを知りたい人もいれば、GHG*削減の話を聞きたい人もいるし、サスティナビリティに関する取り組みを知りたい人もいる。相手の興味関心に合わせた伝え方、そして適した場所から届けていくことは大事なポイントですね。

※二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス

廣瀬受け取り方の選択肢と同じくらい、どこで発信するかも重要ですよね。僕らのターゲットは若い層なのでSNSでの発信が中心ですが、YouTubeは「おもしろさ」に特化したもの、Instagramではもう少しエシカルやサステナブルに寄ったものなどプラットフォームごとに特徴はあります。どこで発信するかによって見る人が求めることは微妙に変わってくるので、そこに合わせることも意識しているかもしれません。

04

嘘のない、本質的な取り組みが信頼を生む

「氷結®mottainaiプロジェクト」のように、背景にあるストーリーをまっすぐに伝えるCMというのは、お酒のCMとしては珍しいですよね。キリンとしてストーリーを伝える重要性をどのように考えていますか?

中川「氷結®mottainaiプロジェクト」でいうと、「氷結®」という商品は果汁がないと成立しないものだから、困っている果実農家さんがいるのであればサポートしたいという発想なんですよね。なのでその背景は伝えたほうがいいだろうと考えています。その分、取り組みにおけるストーリー性をいかにわかりやすく伝えていくかというのは、我々にとって課題ではあります。

廣瀬たしかに、「どうしてキリンさんがこういうアクションをしているんだろう?」というストーリーがもっとわかりやすく消費者に伝われば、よりファンが増えそうですよね。消費者からすると、社会的なトレンドに乗っかっているだけなのか、本質的な取り組みなのかというのは判断しづらい部分で。そこを支えるのが会社の歴史やビジョン、パーパスだったりするのかなと思います。

糸井ここ5~10年くらいの間で、本当に多くの企業さんがSDGsなどをうたい始めていて。それはいいことではあるものの、どこも同じことを言っているなという感覚はどうしてもあります。どれが本当で、どれがフェイクなのかわからないと感じる人も多いからこそ、信頼できるメディアがすすめているということは判断材料のひとつになると思うんです。
そこで伝えるストーリーが、企業の本筋の事業や理念につながっていくものであることも大事ですよね。

藤川それはおっしゃる通りで、チャレンジするという意味ではガラッと変えるのもいいけれど、キリンらしい部分とかけ離れてしまうとそれはそれで違和感をおぼえる人もいるだろうから、悩ましいところですね。ただ時代はすごい勢いで変わっていきますから、時勢に合わせたアップデートも絶対に必要です。そのぶん、会社の軸になる理念やビジョンはますます重要になっていくんじゃないでしょうか。

05

メーカーだから、メディアだから、できること

RICEメディアさんはこれまでの活動のなかで、とくに反応が良かったもの、記憶に残っている活動はありますか?

廣瀬1ヶ月プラなし生活」と「1週間牛飼い生活」は反響が大きかったですね。プラなし生活は僕らのデビュー作というか、世に知ってもらうきっかけになった動画です。プラスチックが問題なのは知っているけど、じゃあ普段の生活で何が削減できて何ができないのか、実際にやってみて考えようという企画で、結果的に3000万回くらい再生してもらえました。

「1週間牛飼い生活」は、RICEメディアで唯一長尺の動画企画。牛肉って動物福祉の面でも問題視されているけれど、実際に僕らが見えていない部分ではどんなことが行われているんだろう?というのを、実際に育てて、食べるまでやってみたものです。僕たちのメディアには「豊かな暮らしの裏側」みたいなテーマが共通してあるので、それを実行した企画でもあります。この動画を見て3ヶ月牛飼いやってみたという視聴者さんも出てきたりして、それも印象に残っていますね。

プラスチック、食肉などの社会課題は、当たり前になっているからこそ見えない部分ですよね。キリングループとして、RICEメディアを見ているような若い世代にも知ってほしいものってありますか?

中川キリンとしては17年ぶりに「晴れ風」というビールの新ブランドを4月に発売し、その商品を通じた「晴れ風ACTION」という取り組みを行っています。これまでビールを楽しむシーンをつくってくれた「お花見」や「花火」などの日本の風物詩を守る活動に売り上げの一部が寄付されるというもので、大きな賛同をいただきました。

※プレミアム・クラフト・販売先限定品・既存ブランド派生品を除く

廣瀬僕も「晴れ風」は飲んだことがありますが、その取り組みは知りませんでした!たしかに、せっかくビールを買うなら寄付できるものを選びたいという気持ちになりますね。

中川商品にQRコードがついていて、そこから取り組みの背景を知ったり、実際に寄付に参加いただけるようになっています。キリンとしては日常的に触れる商品から取り組みを知っていただくことが一番意味のあることなのかなと。ただおいしく飲んでいただくだけでも十分ですが、取り組みを知っていただくことで、より商品を好きになってもらえるのが理想です。

※「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

糸井この取り組み、RICEメディアでもぜひ紹介させていただきたいです。毎日のように手にする身近なビールを買うことで社会貢献ができるって、キリンさんだからできる取り組みですよね。たくさんの人に届く商品を通して、なかなか知ってもらうことができない社会課題につなげていけるのは、やっぱりインパクトが大きいなと思いますし、めちゃくちゃ素敵です。

06

「ソーシャルグッドだから売れる」未来をつくるために

糸井会社としてCSV活動に取り組むには、ビジネスとして成り立っていることも欠かせませんよね。RICEメディアが今後も継続的に社会課題を発信していくには、視聴者さんだけじゃなく投資家やステークホルダーからの評価も必要だと感じています。キリンさんから見て、私たちの活動においてどんなことが大事だと思いますか?

藤川「持続的であること」だと思います。企業活動を中長期的に見てくれる方にとっては、出資する会社が今後もきちんと続いていくかというのは非常に大きなポイント。そのためには環境や人権や人財を大事にしている会社である必要がありますし、会社が進化し続けていることをしっかり伝えることも大切です。

キリンでは、商品やサービスのことはもちろん、我々の取り組みやそれによって環境がどれだけ改善したかというエビデンスも開示しています。そのうえでステークホルダーの方々からしっかり意見を聞いて、議論するという双方向なコミュニケーションをし、そこから得た示唆を次の経営に生かしていくことが大事だと思っています。

廣瀬なるほど。社会的価値と経済的価値の両立ってすごく難しいことだとも感じていて、そのあたりについてもお聞きしたいです。

RICEメディアを始める前は会社の売り上げが500円という月もあり、「社会貢献が利益につなげられない」というジレンマがありました。でも、今はソーシャルビジネスやインパクトスタートアップなど、そこをしっかり両立させようという流れができてきている。昔に比べて実現しやすくなってきていると思いますが、それでもなかなか難しい部分なんじゃないのかなと。

藤川企業としては悩ましいところで、社会的責任をしっかり果たすべきだと思う一方で、株主や投資家の方は「資本コスト以上に利益を生み出しているか」をしっかり見ています。ただ、これから時代が進み、社会的インパクトを伝えやすい指標が充実すれば、また評価も変わってくるとは思います。

キリンは長年、日本代表をはじめとするサッカー応援活動を行っていますが、これは経済的なリターンが大きいからではなく、人と人との絆を深めたり、コミュニティを活性化させるといった社会的価値を生み出すことで、企業としての責任を果たすために行っています。その点をしっかり見てもらえるよう対話をしていくことが大事だと思いますね。

糸井今日キリンさんとお話をして、私たちがやりたいことがより明確になったような気がします。社会性のある商品がしっかり広がることで、「ソーシャルグッドだから売れる」という社会にしていきたいし、そういうものを応援していきたい。

「社会や環境に良くないからやめよう」と思考や行動が消極的なってしまうのは社会にとっても良くないと思うんです。「社会や環境に良いからやろう」のほうが前向きでいい。RICEメディアとして、良い取り組みの商品がしっかり売れていくための入口をつくっていきたいなと改めて思いました。

藤川それは我々としても嬉しいですね。企業自身が発信するのと、みなさんに伝えていただくのでは受け手側の感覚もやっぱり変わってきますから。RICEメディアさんのような会社やメディアに応援してもらうためにも、我々がしっかりとした活動を続けていかないといけませんね。

中川キリンの商品は大麦やポップ、果汁や紅茶葉など農作物を原材料とする商品が多く自然の恩恵を受けています。だからこそ、ものづくりを継続させるうえでも環境問題に向き合うことは重要だと考えていますし、これからも取り組んでいきたいですね。

藤川社会課題は、企業や行政などさまざまな分野の人々が共通のゴールを目指して長期的に協力し合わないと、根本的に解決することは難しい。RICEメディアさんと今日こうしてお話できたことも共創への一歩だと思います。今後も未来を見据えて、一緒にがんばっていけたら嬉しいです。

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