人間に恩恵をもたらす「発酵」、害をもたらす「腐敗」
近年、ますます注目を集めている発酵ですが、本日は、あらためてその魅力や可能性について、お話しいただければと思います。
小泉今、若い人からお年寄りまで、年齢を問わず、発酵にたいへん興味を持たれていますよね。そういう意味では、すでにブームではない。完全に定着して、もう日常生活の一部という感じです。
神崎発酵学のレジェンドである小泉先生に、あらためて「発酵とは?」を語っていただきたいです。
小泉発酵って、よく「腐ってるんでしょ」みたいに言う人がいますけど、まったく逆なんですよね。発酵も腐敗も、目に見えない生き物——つまり、微生物が作用する現象ですけれど、人間にとって、とてもいいことをしてくれるのが発酵です。例えば、善玉菌と悪玉菌があるとしたら、発酵は前者と考えてもらっていい。
納豆菌は納豆を、酢酸菌はお酢を、酵母はパンを発酵させたり、お酒を作ってくれて、乳酸菌はヨーグルトやチーズ、さらには漬物まで作ってくれる。つまり、人間のために役立ち、恩恵をもたらすのが発酵で、それを司る微生物が発酵菌です。逆に、お腹を壊したり、病気にしたりと、害をもたらすのが病原菌や腐敗菌ということですね。
そして、これは胸を張っていいことだと思うんですが、日本は発酵に対して先見の明がある国で、その技術力もすごい。ビールだって、最初はヨーロッパで飲まれていたものだけど、日本に上陸してからは、完全に自分たちのものにしてしまいました。日本のビールって、本当に世界一おいしいと思う。さらには、いまやワインもウイスキーも世界的な地位を確立しています。私は今、半分くらい北海道に住んでいるのですが、中標津のチーズなんて、本場フランスに負けないくらいおいしいもの。発酵って、つくづく日本に一番合った産業だな、と思います。