人生100年時代の美しさとは?齋藤薫さんとキリン、ファンケルが考える“美”のこれから

美容ジャーナリスト / 齋藤薫

株式会社ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ / ⼟井幸永⼦

キリンホールディングス株式会社ヘルスサイエンス事業部 / 吉野桜⼦

公開日:2025年4月23日

内容、所属、役職等は公開時のものです

ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ ⼟井幸永⼦、美容ジャーナリストの齋藤薫さん、キリンホールディングス 吉野桜⼦

変化する時代の中で、美しさの定義はどのように変わってきたのか。そして、これからどのように変わっていくのか。

長年、人々の"健やかな美しさ"に寄り添ってきたファンケルと、飲料や食品を通じて体と心の健康づくりに携わってきたキリン。そこに著書『一日一ページ読めば、生き方が変わる だから"躾のある人"は美しい』(集英社文庫)で知られ、美容業界の変化や生活者の美に関する捉え方の変遷を見てきた美容ジャーナリスト・齋藤薫氏を交え、「これからの美しさとは?」をテーマに鼎談を実施しました。

三者それぞれの視点から、現在の、そして未来の美について語り合います。

美容ジャーナリスト 齋藤薫さん

齋藤薫

美容ジャーナリスト

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『一日一ページ読めば、生き方が変わる だから"躾のある人"は美しい』(集英社文庫)、『“一生美人”力』(朝日新聞出版)など、著書多数。

株式会社ファンケル ⼟井幸永⼦

⼟井幸永⼦

株式会社ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑

ファンケル化粧品のお客様相談窓口を経験したのち、新ブランドの立ち上げや、「美」に関わる様々なカテゴリの商品企画を担当。ファンケルのお客様を深く知り、心が動くサプライズといつまでも寄り添える商品・サービスを生みだし、お客様の笑顔に出会えるのが何よりの楽しみ。

キリンホールディングス株式会社 吉野桜⼦

吉野桜⼦

キリンホールディングス株式会社ヘルスサイエンス事業部

キリンビールに入社し、マーケティング部門を経て、20代の時に社長に直談判して設立したクラフトビール事業(スプリングバレーブランド)に10年間携わる。2022年からキリンのヘルスサイエンス領域の事業戦略を担当。心身の健やかさと美しさの新しい提案を生み出すべく奮闘中。

01

「美しさ」が語る、時代の変化と価値の深まり

ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ ⼟井幸永⼦、美容ジャーナリストの齋藤薫さん、キリンホールディングス 吉野桜⼦

長年、美の価値観に向き合ってきた齋藤さんから見て、特に印象的な近年の「美に対する変化」はありますか?

齋藤そうですね、まさにこの数年は大きな転換期を迎えていると感じます。これまで美の世界では、50歳以上に向けた提案が非常に限られており、更年期以降の女性に向けた本格的なアプローチはまだこれからという状況でした。でも、最近ようやく美容業界で50代の扉が開いたことで、今後、60代、70代、80代へとさらに展開していくでしょう。「人生100年時代」という言葉が生まれるなかで、美の価値観も大きく変化していると感じます。

吉野私自身も齋藤さんのおっしゃる「50代の扉」という言葉に、強く共感しました。というのも、40代を迎えた時に「先輩たち、ありがとう」って心から思ったんです。道を切り開いてくださった先輩方のおかげで、20歳の頃に想像していた40代と、実際の今の40代では、美容における選択肢の広がりが全然違うんです。それは時代とともに築き上げられてきたものだと実感しています。

ファンケルとしては「美に対する変化」についてどのように感じていますか?

土井ファンケルが創業した当時は、化粧品に添加物が含まれ、精製度も低く、美しくなるための化粧品が逆に肌トラブルを引き起こすことが多い時代でした。そうした「不」の解消を目的に立ち上がったという経緯があります。しかし最近は、化粧品の質自体が大きく向上しています。

その一方で、お客様の悩みもどんどん多様化している。以前は「私は敏感肌です」という方が一定数いらっしゃいましたが、今は「敏感肌ではないけど毎日なにかしらの不調を感じている」という声が増えています。これは現代の生活習慣や環境の変化が、私たちの肌に新たな形で影響を与えているということかもしれません。そこにどう向き合っていくのかということを、化粧品メーカーとしていつも考えています。

吉野生活スタイルが多様化し、仕事や家事の両立、デジタルデバイスの使用増加など、さまざまなストレス要因が増えているように感じます。その中で、単に肌の状態だけでなく、生活習慣全体を見直すサポートが求められていると感じますね。

ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ ⼟井幸永⼦、美容ジャーナリストの齋藤薫さん、キリンホールディングス 吉野桜⼦

美容医療など、選択肢が増えていることについてはどうお考えですか?

土井化粧品メーカーとしても、お客様の選択肢が広がることは歓迎すべきことだと思います。ただし、その分、私たちには正しい情報提供の責任も増してきていると感じています。特に若い世代に向けて、まずは日々のケアの大切さを伝えていく必要がありますね。

吉野本当にそうですよね。美容医療も選択肢の一つですが、食生活や運動習慣など、生活全体を見直すことでさらに改善できることも多いはずです。

齋藤その点については、少し危うい時代かなと感じています。美容医療があまりにもポピュラーになってきて、今や外科医が足りなくなるほどです。これからどうなっていくんだろうという不安があります。

私は「美容医療のいらない人生」をテーマに不定期で原稿を書いていますが、美容医療の代わりに何ができるか、インナーケアもそうですし、いろんな方法を見つけていく必要があると思うんです。

02

商品を超えて、暮らしに寄り添う美しさのかたち

齋藤薫さんの著書『一日一ページ読めば、生き方が変わる だから"躾のある人"は美しい』、『一生美人力』

(写真左)齋藤薫さんの著書『一日一ページ読めば、生き方が変わる だから"躾のある人"は美しい』は、所作や言葉、生活など、あらゆる角度から本物の美しさを探求する一冊。知識と経験を重ねた今だからこそ見えてくる、内側から輝く美しさのヒントが詰まっています。(写真右)『一生美人力』は、カリスマ美容エッセイストとして活躍する齋藤さんによる、女性の美しさを引き出すための108の気づきを収録。

齋藤さんは、今の時代を象徴する「美しさのキーワード」としてどんなものがあると考えますか?

齋藤私は「透明感」と「清潔感」が重要だと考えています。実は、一目惚れするときの条件として、多くの方が挙げるのが透明感なのだそう。「一目惚れをした経験がありますか?理由は何ですか?」と聞くと、「透明感がある人だった」という答えをよく聞きます。

ただし、透明感というのは非常に難しい。自分で鏡を見てもなかなか感じられないもの。肌の奥深くからにじみ出るような、美しさの本質だと思います。

それに対して清潔感は、心がけ次第で作れるもの。声にしても、髪にしても、どうしても清潔感は年齢とともに失われていくことは否めませんが、意識して補っていけば作り上げることができる。特に年齢を重ねたら「まず清潔感を取り戻すことから始めましょう」と私は言っています。そうしているうち透明感も出てくるんじゃないか、そんなふうに考えています。

土井確かに透明感というのは、その人の内面が少し見えるような印象を与えますよね。それを感じるということは、その人の心も美しいのだろうと。そういう深いレベルでの美しさを感じさせる言葉だと思います。

「美しさ」はスキンケアやメイクだけではなく、内側から整えることが大切なのですね。

齋藤私は更年期を過ぎてから、美容の軸を大きく変えました。塗るだけでなく、飲む、つまりインナーケアを美容の中心に置くようになったんです。サプリにまつわるちょっと楽しい話もあって、たとえばファンケルの「カロリミット」のようなものも常に持ち歩いていて、お友達とご飯を食べるときに、みんなで心おきなく食べられるように皆さんに配る。そうするとみんな本当に大喜びで「食べよう、食べよう」ってなるんですね。

そういう意味でも、毎日のよろこびとしてインナーケア製品は重要な役割を果たしています。よろこびが次の日の目覚めの良さにつながったりもしますし、毎日自分によろこびを与えることはすごく重要だと感じています。

インナーケアのお話から、美容が自分自身のためだけでなく人との関わりにも影響すると感じました。美しさと人間関係や社会とのつながりについて、どのようにお考えですか?

齋藤私はよく「顔は個人的なものであると同時に、社会的なものでもある」と考えています。美しさというのは自分だけのものではなく、他者との関わりの中でも生まれるもの。だからこそ、社会的なウェルビーイング、つまり周りの人を心地よくするような存在であることも美しさの一部なんです。自分を大切にしながら社会とより良くつながる、そこに本当の美しさがあると思います。

また、美を「身だしなみ」という観点で捉えることも大切だと思っています。元気で、楽しく、自分らしい美を探していくこと。それが内側からの美しさを育てる第一歩ではないでしょうか。

吉野キリンでも、美しさや健康は自分自身のためであると同時に、人との関わりを豊かにするものだと考えています。きれいでいることで自分に自信が持て、それが人と接するときの笑顔にもつながる。そうした心と体、個人と社会をつなぐウェルビーイングの視点が大切なのかもしれないですね。

キリンホールディングス 吉野桜⼦

吉野キリンでは、お客さまの健康価値の実現に向けて様々な取り組みを行っています。たとえば健やかな毎日を過ごしていただくため、免疫とともに内臓脂肪や筋力等、様々な健康のお困りごとに着目し、複数の機能を持つサプリメントを開発、販売しています。また、免疫力というのは目に見えないので、そのためだけにケアをするのは難しい面もある。だからこそ、さまざまな飲料やヨーグルトなど、いろいろな形で摂取できるようにしています。

私たちはウェルビーイングの考え方、つまり心の健康と体の健康がつながっているという視点を大切にしています。体の健康のためだけなら、味気ない食事で栄養素を取ることもできます。でも、おいしいものは人を幸せにしますよね。だからこそ、おいしく健康に良いものを提供したい。それは美容についても同じです。ただ健康な肌を目指すだけでなく、きれいでいることで自分のことも好きになれる、人と接する時にも笑顔が出やすくなる、そういった心の健康も大切にしていきたいと考えています。

ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ ⼟井幸永⼦

土井土台を良くするためには、外からの栄養も内側からの栄養も、両方が必要です。最近の具体例をお話しすると、ファンケルでは「toiro(トイロ)」というアラサー向けのスキンケア商品を発売しました。これは、忙しいアラサー世代の生活スタイルに寄り添った商品です。不規則な生活や睡眠不足で肌の調子が悪くなりがちなこの世代に向けて、「その生活スタイルを否定せず受け入れたうえで、私たちが化粧品で肌の調子を整えるサポートをしていきましょう」という提案をしています。その人の生活に寄り添い、現実的な解決策を提供することが、私たちの考える内側からのケアの一つの形かなと思っています。

03

未来をつくる、本質的な美との向き合い方

ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ ⼟井幸永⼦、美容ジャーナリストの齋藤薫さん、キリンホールディングス 吉野桜⼦

これまでのお話を伺いながら、「美しさ」は単なる外見だけでなく、心や健康とも深く結びついていると改めて感じました。これからの時代、どのような「美しさ」が求められていくと思いますか?

齋藤実は今、私がすごく興味を持っているのは、美容の枠を超えた、もっと大きな意味でのアンチエイジングなんです。近年では、長寿研究が進み、一部では135歳まで生きることを目指す考えも出てきています。

もっと人類レベルの、地球規模のアンチエイジングが始まるんじゃないかと、すごくわくわくしているんです。そういう意味では、肌1枚からトータルな若さへ自分の中でも広がりを持って視野を広げていきたいと思っています。

吉野キリンとファンケルは、それぞれ「健康」と「美容」の分野で研究を重ねてきました。この二社が連携することで、新しい「美しさ」の価値を生み出せる可能性があると感じています。

今日お二人と話したように、私としても心と体の美がつながっていると考えていて、「いくつになってもきれいでいなきゃ」というプレッシャーではなく、その年齢だからこそのモチベーションや自信を持つことが大切だなと思うんです。私たちは、そんな毎日の健康づくりのお手伝いができればと考えています。

土井ファンケルでも、お客様一人ひとりの生活に寄り添うことを大切にしています。化粧品だけでなく、美容の選択肢が増えてきた今だからこそ、正しい情報提供と安心・安全な商品開発に努めていきたいと考えています。

ファンケル 化粧品事業本部 化粧品商品企画部⻑ ⼟井幸永⼦、美容ジャーナリストの齋藤薫さん、キリンホールディングス 吉野桜⼦

齋藤キリンとファンケルは、入口は違えどゴールは一緒。そう感じさせてくれる二社なので、コラボレーションには大きな期待を寄せています。これからの時代、健康寿命を考えても大きな意味でのアンチエイジングは避けられません。単に長生きすればいいわけではない。元気であることが一番重要で、そのためには健康と美は本当にかけがえのないものになる。

年を重ねるごとに増えていくものって何かなと考えると、それは知恵だったり知識だったりするんですね。知的好奇心をどんどん膨らませることによって、それ自体がエイジングケアにもなるし、若いことだけを良かったなって振り返ることもない。歳をとっても失うものばかりじゃない。むしろ年齢を重ねるほどに増えていき、進化していくものを自分の中に見つけながら生きていく。そういう時代が来ているんじゃないでしょうか。

  • 撮影土田凌
  • テキスト大西マリコ
  • 編集花沢亜衣、株式会社RIDE

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