「食」だけにあらず。まだまだすごい発酵の話
前編では、主に「食」という観点から、「発酵」のすごさ・面白さについて語り合っていただきました。後編では、さらに踏み込んで、発酵と微生物が、私たち人間の未来にとって、どのような可能性を秘めているのかをお話しいただければと思います。
小泉いろいろお話ししてきましたけど、発酵のすごさは、まだまだこんなもんじゃありませんよ。一般には「食」の領域が一番ポピュラーですが、微生物は、本当はもっともっと多方面で活躍しているんです。実際、発酵を産業という視点から見てみると、 日本における発酵産業の総生産高は数十兆円に上り、しかも、 そのうちの食品が占める割合は全体の約2割にも満たないのが実情です。
残り8割強には、どのようなものがあるのでしょうか。
小泉例えば、医薬品の分野ですね。抗生物質や抗癌剤、抗潰瘍剤なども、発酵によって作られています。さらに今では、ホルモンやビタミンなども発酵で作るのが当たり前ですし、人の体を作っているタンパク質を構成するさまざまなアミノ酸も発酵で作られるようになった。人の健康に関する領域において、発酵の果たしている役割は年々大きくなってきています。このへんは、まさに協和発酵バイオさんの専門ですよね。
神崎そうですね。「発酵で社会問題を解決する」という視点は、創業から一貫したものとしてあります。そして、先ほど先生に言及いただいた発酵由来のアミノ酸は、弊社において非常に重要な事業の1つです。技術が確立された今では、もはやアミノ酸を発酵以外の方法で作ることは考えられません。そのくらい、環境的にも、コスト的にも、優れた生成方法となっています。
小泉微生物にお願いする—つまり、微生物のもつ力をお借りすると、化学的に生成するよりもすごく経済的なんですよね。そして、これからの時代、私たち人類の未解決な問題の多くは、発酵によって解決し得るのではないか。私はそう強く信じていて、20年ほど前から「FT革命」——すなわち「発酵技術(Fermentation Technology)革命」という言葉を提唱し続けています。