「貢献」ではなく「当たり前」に。利他主義がブランドの未来をつくる

  • Photo : 高橋マナミ
  • Text : 辻本力
  • Photo direction : 篠澤隆文(CINRA)
  • Edit : 𠮷田薫(CINRA)

アフリカのクラフトとコラボレートしたブランド「TÉGÊ UNITED ARROWS」を通して、現地の人々の自立を支援するユナイテッドアローズと、茶葉の生産地であるスリランカの農園を長年にわたり支援してきた「午後の紅茶」。それぞれが考える、ブランドに求められるこれからの姿勢や、「誰一人取り残さない」世界像についてお話しいただいた。

INDEX

  1. 新型コロナウイルス感染拡大以降、求められているのはカルチャーを背負ったプロダクツ
  2. スリランカ産の茶葉なくして「午後の紅茶」は存在しないと言っても過言ではない
  3. 「知る」ことの重要性と、「教育」の無限の可能性
  4. 「ファッションは農業」の視点から、服の生産者を考える
  5. 「なんちゃってSDGs」は通じない。ブランドに必要なのは、共感に裏打ちされた「好き」
  6. 誰一人取り残さない。「豊かになることの代償」は時代遅れ
  7. 社会だけじゃなく従業員も。すべての人の幸せに責任を持つ

栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問

大学卒業後、ファッション小売業界で販売員、バイヤー、ブランドディレクターなどを経験し、1989年にユナイテッドアローズ創業に参画。販売促進部部長、クリエイティブディレクター、常務取締役兼CCO(最高クリエイティブ責任者)などを歴任し、現職。2004年に英国王立美術学院から名誉フェローを授与される。LVMHプライズ外部審査員。2011年からツイードラン・トウキョウの実行委員長を務める。

加藤麻里子キリンビバレッジ株式会社マーケティング部 ブランド担当 担当部長
シニアブランドマネージャー

大学卒業後、ネスレニュートリション株式会社(現ネスレ日本株式会社ネスレヘルスサイエンスカンパニー)に入社。営業部を経て、マーケティング部に所属。その後、モンデリーズ・ジャパン株式会社に入社し、マーケティング部でクロレッツやリカルデントのブランドマネージャーとして従事。2018年4月にキリンへ入社し、キリンビバレッジ マーケティング部で「午後の紅茶」ブランドマネージャーを務める。2020年4月よりシニアブランドマネージャーとして、引き続き、「午後の紅茶」を担当している。

新型コロナウイルス感染拡大以降、求められているのはカルチャーを背負ったプロダクツ

━━栗野さんは、アフリカの人々と協働してものづくりを始める以前は、アフリカの文化にどのようなイメージを持たれていましたか?

栗野:憧れがありましたね。アフリカの人々がつくるハンドクラフトや、彼らの服の着こなしに強い興味がありました。それに、アフリカ大陸には55※の国があり、各地域でつくるものの傾向が異なります。
※アフリカ連合加盟国数

ジャングルの多いところはジャングルっぽい色味、砂漠が多い地域は砂漠っぽい色味と、土地のカラーやカルチャーがそのままクラフトに表れている。ぼくはそういった服の「向こう側」にあるものに興味があるんです。

栗野宏文氏

栗野:そして、アフリカとファッションといえば、日本ではコンゴ共和国、コンゴ民主共和国の「サプール」(SAPEUR:「お洒落で優雅な紳士協会」という意味のフランス語の頭文字からとって、そう呼ばれている)のことが大きな話題になり、NHKでドキュメンタリーもつくられました。ポピュラーになったのは最近ですが、彼らは実はぜんぜん新しい存在ではなくて、実に100年近い歴史があるそうです。日本でも、1970年代くらいから『POPEYE』『BRUTUS』といった雑誌で紹介されていました。

加藤:そんなに昔から!

栗野:サプールの洒落に身をやつす感じとか、ファッションがそのまま生き方になっている様が格好良くて感動的で、ぼくをはじめ、ユナイテッドアローズ(以下、UA)の創業メンバーは長らく憧れを抱いていましたね。

そんな伏線があったうえで、2007年に、開発途上国の人々の自立を、ものづくりを通して支援するプロジェクト「エシカル・ファッション イニシアチブ(以下、EFI)」から、「日本における活動のパートナーになりませんか?」というお話をいただき、実際にアフリカに行ってものづくりをスタートさせました。

ブルキナファソでクラフト作品を手にとって確認する栗野氏。
ITC Ethical Fashion Initiative

━━そうして始まったアフリカとのコラボレーションは、2014年春に立ち上げられた新レーベル「TÉGÊ UNITED ARROWS(テゲ ユナイテッドアローズ)」(以下、「TÉGÊ」)へと結実します。

加藤:「TÉGÊ」というのは、マリ共和国やブルキナファソで話されるバンバラ語の言葉なんですよね。

栗野:ブランド名には是非現地の言葉を使いたかったんです。それで、例えば「愛」や「友情」のような象徴的な言葉を何というのか教えてもらったのですが、いかんせん発音が難しくて、まずぼくらが覚えられない(苦笑)。

そんな折、何かの拍子に現地の人が「テゲ」と言ったのが耳に留まりました。意味を聞いたら「手」という意味だ、と。このレーベルは、いうなればアフリカのハンドクラフトを前提にしている。まさに「手の芸」です。これ以上ぴったりなネーミングもないでしょう。そうしてぼくがディレクションを担当させてもらい、以来8年間、「TÉGÊ」として毎年プロダクツを世に出し続けています。

手織りの生地を使用した「TÉGÊ」のトートバッグ

━━ここ1、2年は新型コロナウイルス感染症の拡大で、アフリカの国々とのものづくりも大変ではないですか?

栗野:そうですね。現地に行くことができないので、困りました。ただ、過去にやりとりした膨大な資料が残っているので、色違いをつくったり、柄のサイズを変えたりといろいろ試行錯誤をして、いまのところやりくりしています。

これまでは地味にやってきたのですが、コロナで世の中が閉塞感を感じているからか、「TÉGÊ」のようなカルチャーを背負ったプロダクツへの関心が強まっているのをひしひしと感じています。実際、社内で、来年の春夏に向けて2つの業態から「TÉGÊ」とコラボレーションしたいと打診がありました。それに、ある外部の企業からも「TÉGÊ」の生地を自社製品に使えないかとオファーがあり、現在動き出しているところです。

西アフリカのマリ共和国でつくられているハンドプリントの生地を使用したジャケット。アフリカの生地や柄には何らかの願いや祈りが込められていることが多いという。「TÉGÊ」では、現地の人々の文化をリスペクトし、使用する生地は「特別な意味がない柄」をセレクトするようにしている

栗野:コロナ以降、人の価値観が揺らいでいるのを感じます。ただ儲かればいい、ただ多くの人の目に止まって話題的に盛り上がればいい、みたいなモードから脱却しつつあるのではないでしょうか。ちょっと大袈裟かもしれませんが、そうした流れのなかで、人の魂やカルチャーを感じられるようなプロダクツが、あらためて求められつつあるんじゃないかな、と。

スリランカ産の茶葉なくして「午後の紅茶」は存在しないと言っても過言ではない

━━「午後の紅茶」は、長年スリランカで支援活動を展開されていますが、どういった経緯で始まったのでしょうか?

加藤:きっかけは15年前、「午後の紅茶」が発売20周年を迎えた2006年に遡ります。「発売20周年を迎えた記念に、何かスリランカに貢献できることをやろう」という話からスタートしました。

加藤麻里子氏

栗野:でも紅茶は、ほかにもいろいろな国でつくられていますよね? なぜスリランカだったのですか。

加藤:これは私も入社後に聞いてびっくりしたのですが、日本に輸入されてくる紅茶葉の約50%がスリランカ産なんです。しかも、その約4分の1を「午後の紅茶」が使用している。さらに言えば、ブランドが誕生した1986年以来ずっと、「午後の紅茶」の一部にスリランカ産の茶葉を使用し続けています。

以前、紅茶を開発しているチームに「スリランカ産茶葉がなかったら『午後の紅茶』はどうなるんですか?」と聞いたことがあるのですが、「スリランカ産の茶葉が出す、繊細な味わいなくしては難しいです」と言われてしまいました。つまり、スリランカ産茶葉が輸入できなくなったとしたら、「午後の紅茶」をつくることは困難というわけです。

栗野:同じクオリティーのものをつくるのが難しくなってしまう、と。

加藤:はい。でも実際のところ、何をすればスリランカの皆さんの力になれるのかがわからなかった。そこで、現地のニーズをヒアリングしたところ「教育」の問題が大きいことがわかりました。

当時、茶園のある、いわゆる広大な田舎のエリアは、都市部に比べて学校教育が劣位な環境にありました。茶園で働いている方の子どもたちが通う小学校で学力向上に少しでもつながるものをと考え、始めたのが「キリンライブラリー」という図書寄贈の活動です。以来、本棚と100冊くらいの本を寄付する活動を毎年続けていて、寄付した学校は200校を超えています。

KIRIN寄贈の本を手に取るスリランカの子どもたち

「知る」ことの重要性と、「教育」の無限の可能性

加藤:「キリンライブラリー」のほかにも、2013年から茶園が「レインフォレスト・アライアンス認証」を取得するための支援活動を行なっています。これは、対象となる製品や原料が、社会・経済・環境の3つの持続可能性の強化につながる生産手法であることを保証する、国際的な認証です。取得することで、農業の技術が向上し、労働環境が整備されたり、利益が増えたりするメリットがあります。

栗野:認証を取るのはやはり難しいのですか?

加藤:取得するためには現代の農業に関する知識が不可欠なのですが、この活動をはじめた時点では、知識が圧倒的に足りていない農園が多かったそうです。農園のノウハウは親から子に代々受け継がれていくものですが、昔からのやり方が必ずしも正しいとは限らなくて。例えば、農薬を散布したTシャツのまま家に帰り、そのTシャツを子どもの服と一緒に洗濯してしまうことで農薬がほかの服に移り、子どもたちの健康被害が懸念されるといった問題がありました。

8月にリニューアル発売した紙パック型のストレートティー。左上の緑のロゴがレインフォレスト・アライアンス認証マークで、本品も認証茶葉を90%以上使用している

栗野:知識向上を目的としているという意味では、キリンライブラリー同様、根底に教育を重視する視点があるように感じますね。

加藤:たしかに「知る」ことの重要性が軸になっていると思います。スリランカの茶園で生まれ育つと、これまでは女性だったら茶摘みになる、男性だったら茶園のリーダーやマネジャーになる、みたいな道が当たり前でした。

「親の仕事=子どもの考える将来の仕事」だった。でも、本当はそれ以外の世界もあります。もちろん、茶園で働きたければその道に進めばいいし、ほかに将来の夢があるのなら、その道を模索してもいいはずだと思うんです。

━━つまり、「他に選択肢がある」ということ自体を知らない子どもたちが多かったわけですね。

加藤:そのとおりです。図書寄贈が、そうした「茶園以外の道もある」「こういう職業もある」という、ごく当たり前な可能性を知るきっかけになったら嬉しいです。

栗野:「知る」、すなわち「教育」の重要性ですね。教育は、その効果が現れるのに少し時間はかかりますが、得られるものが圧倒的に多い。キベラスラムというアフリカ最大のスラム街に行ったことがありますが、みんな拾ったもので暮らしている貧しいところで。

でも、親たちが頑張って、子どもたちを学校に行かせているんです。彼らのうちの誰かが、ひょっとしたら未来のバラク・オバマになるかもしれない。あるいは、世界的な科学者や政治家、アフリカのリーダー的存在になるかもしれない。そうした無限の可能性を秘めているのが教育なのだと思います。

「ファッションは農業」の視点から、服の生産者を考える

━━加藤さんは入社後、実際にスリランカの茶園に行かれたのですか?

加藤:入社した年に行かせてもらいました。スリランカはまだまだ交通インフラが整備されていないので車で長距離を移動することになり、1回の旅程では、1週間かけて5農園くらいを回るのが限界でしたね。 特に驚かされたのは、茶園は基本的に急斜面にあるので機械を使えないんですよ。だから、このご時世に全部手摘みなんです。

栗野:構造上、人の手でやるしかないんですね。

加藤:かつ、作業が繊細だから、というのもあります。みんな、ものすごいスピードで茶葉を摘んでいくんですよ。私も茶摘みのお手伝いをさせていただいたのですが、摘んでいい茶葉を見分けるだけでも時間がかかりました(笑)。実際にやってみて、あらためて茶園の皆さんの技術に感謝しましたね。

加藤:現地では、茶摘みの方をはじめ、茶園で働く方々とたくさんお話しました。ここでつくられた茶葉が、遠く日本という国で「午後の紅茶」という商品になって売られているんですよ、と感謝をお伝えすると、自分たちの毎日の仕事が役に立っていることを喜んでくれて、嬉しかったです。

こちらが現地に赴いて、実際に生産の現場を目の当たりにしないと見えてこないことがたくさんあるように、農園の方たちが一所懸命につくった茶葉が日本でどのように飲まれているのかを、私たちが積極的に伝えていかないと向こうにもなかなか伝わらない。そのためにも、数年に1回ですが、継続的に記念式典や感謝セレモニーを開催し、皆さんの日々の仕事への敬意と感謝を伝えることはとても大事なことだと思っています。

手摘みで茶葉を収穫するスリランカの茶園の人々

栗野:ぼくは近年、「ファッションは農業である」としきりに言っているんです。だってコットンは綿花からつくられるじゃないですか。麻も麻の葉が原料です。羊毛の羊は草食動物ですしね。農業とファッションというのは、実は強く結びついているんですよね。

「農作物=口に入れるもの」というイメージが強いから、食品に関しては産地や生産者などを気にする人もいると思うのですが、ファッションという観点からも土から生まれるものに関心を持ってほしいです。そうした興味の動線をつくっていくのも、これからのファッションブランドの役割なのかもしれない、と加藤さんのお話を聞いていて思いましたね。

「なんちゃってSDGs」は通じない。ブランドに必要なのは、共感に裏打ちされた「好き」

━━では、そうした支援活動は、それぞれのビジネス面にはどのような影響をおよぼしていると思いますか。

加藤:支援活動は、企業として当然の責務と考えていますが、そういった活動がブランドを愛してもらう一つのきっかけになったら嬉しいな、と思っています。

いまは、小中学校でもSDGsについての授業があったりしますし、若者の間で今後そうした関心はより高まっていくことが予想されます。そうした感度の高い若年層が、これから10、20年すると消費のど真ん中にくる。こうした視点でものを考えていない会社やブランドは生き残れないと思います。

栗野:しかも、それがギミックじゃいけないんですよね。例えば、「Z世代」と呼ばれる若者たちを見ていると、すごくよく調べて研究しているから、嘘を見抜く力がある。「なんちゃってSDGs」みたいなのは通じないぞ、と痛感させられます。だから、広告的なものも、大きな岐路に立たされているように思います。

かつてはフレームアップして、単純に好感度を得ることが広告の役割だったかもしれないけど、いまは理念に共感してもらえるかどうかのほうが問われる。先ほど、加藤さんが「好きになってもらう」とおっしゃっていましたが、それは共感に裏打ちされていないとダメなんですよね。

栗野:ぼくはずっとUAの販促のチーフだったから、次に誰が「午後の紅茶」のCMの顔になるのがいいのかな、とかつい考えちゃうな(笑)。タレントさんもいいですけど、今日のお話をうかがっていて、それこそスリランカの茶園の方とかいいんじゃないかなと思いました。だって飲料系のCMって、どの役者さんもすごく美味しそうに飲むから、どれも美味しそうに見えてしまう。差別化が難しくなっていると思うんです。

加藤:いますごくびっくりしているんですけど、実は今年の夏のCMは、まさにスリランカの茶園に撮影に行って、茶摘みさんにフォーカスしたストーリーを描くという内容を考えていたんです。でも、あいにくコロナ禍で行けなくなってしまって……。今年は撮影できないかわりに、茶摘みの方のストーリーをアニメーションにしました。来年以降、コロナが落ち着いたら撮影に再挑戦したいと思っています。

キリン 午後の紅茶 「スリランカ紅茶農園の支援」35周年篇 30秒

誰一人取り残さない。「豊かになることの代償」は時代遅れ

栗野:お話をうかがっていて、「午後の紅茶」の取り組みと、「TÉGÊ」には大きな共通点があるなと思いました。どちらも支援的な目的はあるけれど、それだけではないんですよね。

ぼくらが手を組んだEFIが掲げているテーマは「not charity just work」です。雇用を生むことが大事であって、一方的にただ手助けをするのが目的ではないということですね。ぼくらは、彼らがつくるものが必要だからコラボレートするし、逆に彼らは、ぼくたちが必要なものを提供することで収入や権利を受ける。

その先にある目標は、現地の人々が仕事を得て独立できたり、女性の自立が促進されたり、銀行に口座を設けられるようになったり、子どもたちが学校に通えるようになったりすることです。

加藤:たしかに、私たちには通底するものがありますね。スリランカへの支援をスタートする前の2010年代の初め頃、レインフォレスト・アライアンス認証の存在を知った頃の弊社のなかで、2つのオプションがありました。ひとつは、すでに認証を取得している農園の茶葉を調達すればいい、という方法。もうひとつは、農園が認証を得るためのサポートをしていこうという方法です。

栗野:キリンさんは後者を選ばれたわけですね。

加藤:はい。認証を取得できる農園というのは、ある程度裕福な農園なんです。前者を選ぶと、そうした余裕のある農園以外を置き去りにしてしまうことになる。しかも「認証を得ていない」農園のほうが圧倒的に多いという現実があった。未来的な視座に立つと、すでに認証を得ている数少ない農園とだけ取引していては、持続可能性は担保できませんからね。

栗野:SDGsでは、地球上の「誰一人取り残さない」という誓いが掲げられています。おそらく20世紀半ばくらいまでの豊かさとは、都会化することだったり、西欧化することだったりしました。でも一方で、そこには環境課題などが発生したり、犯罪が増えたりといった負の側面があったことも忘れてはなりません。

加藤:豊かになることで生じる副作用みたいなものも、受け入れることで成り立っていたわけですよね。つまり、格差が生まれてしまうことが織り込み済みだったという。

栗野:いまそれを「仕方がない」「必要な犠牲」と言ってしまうのは、はっきり言って時代遅れでしょう。それよりもキリンさんのように、茶葉を採る人たちのところまで直接赴いてダイレクトにコミュニケーションをし、商品を支えてくれている生産者がハッピーに暮らしているかどうかまでもをチェックするというあり方のほうが、いまの社会の潮流的には正しい。というか、そうしたサステナブルの追求を積極的にやっていこうという心意気のある企業しか、これからは生き残れないと思いますね。

社会だけじゃなく従業員も。すべての人の幸せに責任を持つ

栗野:SDGsというキーワードが叫ばれてなかったとしても、そもそも企業が考えるべきは、人が何をもって幸せと思うか、自分たちはどういう幸せを提供していくのか、ということにつきると思います。

加藤:同感です。なので、弊社で近年特に重視しているのがブランド・パーパス——どのようなブランドでありたいか、自分たちのブランドを通じて世の中にどのような影響を与えたいか、という視点です。

「午後の紅茶」は、ブランドとしての社会的存在意義を「幸せなときめきを届ける」と規定しています。お客さま、原産地であるスリランカの皆さん、従業員——つまり「午後の紅茶」に関わるすべての方々の幸せな瞬間に寄与し、ときめきを与えられているか。それを軸に、すべての判断をしています。

栗野:そうした視線が、社会に対してはもちろん、自社の従業員たちにも向くというのも重要だと思います。UAは、去年コロナの影響で3か月ほど店舗を閉めざるを得なかったのですが、そのときにまず考えたのが、約4,200人いる従業員の存在です。彼らには家族もいるし、さらに言えば、UAの商品を買いたいと言ってくれるお客さまの存在もある。

あえてステークホルダーという言葉を使わせてもらうなら、そうした広い意味での利害関係者に対して、企業は責任を持たなければなりません。だから、社長がこの状況下で雇用の継続と創出という方向性を打ち出してくれたときは嬉しかった。

栗野:企業が成長してこられたのも、従業員とその家族、そして買ってくださるお客さまがいたおかげですから。それに、成長したなら、成長した責任というものもあるから、腹を括らなきゃならない。責任を持たなければいけない相手が頼ってきたなら、それにはちゃんと応える義務がある。そうした行いを「我がこと」と同じくらい大事なこととしてとらえる気持ちが大切だと思います。利他主義を前提にやり続けていけば、それこそ日本のこれからを担う若い世代もついてきてくれるはずです。

加藤:そうした基本姿勢を示すための社会貢献、ということもありますしね。

栗野:でも、ぼく自身は「貢献」という言葉があまり好きじゃないんです。それは、そもそも企業が、企業活動をしていること自体が世の中の役に立ってないと意味がない、と思うから。会社が儲かったから、余裕が出てきたから、世間体が気になるようになったから、みたいなことで社会貢献を言い出す企業がありますが、ぼくに言わせると、それは本末転倒だと思う。サステナブルを根づかせていく活動が、むしろ企業に求められる「当たり前」だと思って日々仕事をしていきたいですね。

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