「ザ・日本の朝食」みたいな芸名のわたしだが、超がつくほど朝が弱い。9時に起きられたら早起きの部類に入る。正直に話すほど恥ずかしくなってくるが、目を覚ましても1時間は布団のなかでうだうだしていたい。これは休日の話ではない。高校生の頃は始発電車に乗って吹奏楽部の朝練に励んでいたので、長らく自分は早起きができる人間だと勘違いしていたが、あの頃よりも睡眠時間がたっぷりとれているいまの方が、一日が充実している気がする。
起きてまずやることは、スマホのアプリでラジオを流すこと。ラジオは、自宅で仕事をすることが多いわたしと世の中の接点だ。寝ぼけた状態で聴いていると、明朗に話すDJ、番組を放送するために働いている人たち、さまざまな場所で聴くリスナーの姿がだんだん脳内に浮かび上がってくる。「みんなとっくに起きて頑張ってる! そろそろ起きなきゃヤバイぞ!」と自分にはっぱをかける作戦だ。ラジオを聴かないと、朝を引きずったままぼんやりと過ごしてしまう。
食事は朝昼兼用だ。大体決まったメニューを食べる。みそしる・ごはん・納豆・卵。チョリソーがつく日もある。
寝起きが悪いわたしは、みそしるもゆっくりつくる。キャベツの芯や根菜の皮、中途半端に残った野菜などを水からコトコト煮て旨味を引き出す。こうすると昆布やカツオで出汁を取る必要がない。みそを溶けば野菜たっぷりの具沢山みそしるができあがる。目が覚めていない状態でも、これならおいしくつくれる自信がある。コクが欲しい時は油揚げや煮干しを入れたり、朝からたくさん食べられる丈夫な胃袋を持っているので豚汁にしたりすることもある。
大事なのは、ちょっと時間をかけること。急いで煮ると旨味を出しきれない。真っ暗な空が朝焼けに染まっていくような、ゆるやかな変化をイメージしながら火を入れると自分好みの味になっている。朝焼けなんてもうしばらく見てないけど。
こうして自分の朝を客観視してみると、そのスロースターター具合に驚いた。同時に一貫しているなぁとも思う。上京して14年。自分でも気づかないくらいゆっくりと、自分にフィットする朝の習慣を身につけていたようだ。そして何年か経って、ふと振り返ったとき。いまとはまったく違う朝を過ごしているのかもしれない。