日本で初めて免疫機能で機能性表示食品として届出が受理された『iMUSE』
まず『iMUSE』とは何か教えていただけますか?
佐野『iMUSE』は35年の免疫研究から生まれたブランドです。キリンが発見した「プラズマ乳酸菌」「KW乳酸菌」を、日常に取り入れやすい形として飲料やサプリメントなどの商品に展開しています。
プラズマ乳酸菌とは、どのような働きをするものなのでしょうか?
藤原プラズマ乳酸菌は、健康な人の免疫機能の維持をサポートするものです。そのメカニズムは、プラズマ乳酸菌が免疫細胞の司令塔である「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」という細胞に働きかけ、その司令塔の指示によって、免疫機能全体が活性化されるというものです。
「iMUSE」ブランドはいつ誕生したのですか?
藤原実は、「プラズマ乳酸菌」を使った商品は、同グループの小岩井乳業からすでにヨーグルトとして発売されていたんです。プラズマ乳酸菌は扱いが難しく商品化には向かなかったのですが、共同研究を行っていた小岩井乳業がとても美味しいヨーグルトに仕上げてくれました。
佐野ただ、発売当初はまだプラズマ乳酸菌の知名度が低く、肝心の機能は直接伝えられませんでした。その理由のひとつが、薬機法の問題です。法律の規制により、食品では機能をそのまま表現することは制限されています。
それで、我々が最初に手をつけたのはデザインでした。言葉で伝えるのが難しいのなら、見た目でお客様に感じていただく方法を考えようと。そういう考えのもとに、まずは『iMUSE』というブランドをグループ横断で立ち上げたんです。飲料やヨーグルト、サプリメントに展開することでお客様に商品が見える状態をつくろうとしたのです。
プラズマ乳酸菌を使った商品に特化したブランドを立ち上げて、広く認知してもらおうと。
佐野そうですね。その次に、プラズマ乳酸菌のはたらきとは何か?を伝えるCMを作りました。お客様にわかりやすくイメージしていただくためにビリヤードをモチーフに、司令塔の細胞を模したひとつのボールにプラズマ乳酸菌がぶつかって、全体が活性化するようなイメージで、プラズマ乳酸菌が免疫の司令塔にはたらきかけることを表現したんです。
そういうコミュニケーションの開発によって、プラズマ乳酸菌の認知はグッと上がりました。そして今年、免疫の機能性表示にチャレンジし、これまでの研究で積み上げてきた成果をもとに行政に届け出を行い、ついに機能性表示食品の届出が受理されたんです。
存在するかもわからないプラズマ乳酸菌の探索
プラズマ乳酸菌を使った商品に特化したブランドを立ち上げて、広く認知してもらおうと。
藤原もともと私は2000年から「食と免疫の関係」をテーマに研究をしていました。そのなかで最初に見つけたのが「KW乳酸菌」というもので、今もサプリメントやヨーグルトとして販売されています。KW乳酸菌を世に出した後、アメリカに留学して、「pDC」の基礎研究をしていたんです。
先ほどのお話にあった、免疫細胞の司令塔になる細胞ですね。
藤原はい。その研究を進めていくなかで、pDCが体内で重要な働きをしていることがだんだんわかってきたんです。それで帰国後はpDCを活性化させる研究を始めました。そこで見つけたのが「プラズマ乳酸菌」です。
人間の体には様々な免疫細胞があって、その一部を活性化させる方法は見つかっていました。ただ、免疫の司令塔となる「pDC」自体を直接活性化させる方法はないと考えられていたんです。
つまり、その存在しないと思われていた乳酸菌を藤原さんが発見されたのですか?
藤原はい。ただ、私は「どんな研究をしても、それがお客様に届かなかったら意味がない」と思っているので、プラズマ乳酸菌を使って商品化することを進めました。手軽に摂れる食品で免疫機能の維持を助けるという方法は現実的で、研究としての独自性もあるので、社会的に意義があることだと思ったんです。
存在するかどうかもわからないものを探索するって、手掛かりがないまま道を進んでくってことですよね。
藤原そうですね。だいたい5つくらいの仮説を立ててそれらを同時進行で研究していくのですが、プラズマ乳酸菌も初めはその仮説のひとつに過ぎませんでした。
その仮説から、どのようにプラズマ乳酸菌を見つけていったのですか?
藤原蓄積してきた過去のデータといくつかの仮説を立てたうえで研究を進めていきますが、時には理論的に考え過ぎないよう直感も大事にしました。「あの辺にいそうだな」っていうあたりをつけて、感覚を働かせて手がかりを見つけていくようなイメージです。
感覚としては、草むらのなかでバッタを捕まえるのに近いですね。広い草むらでバッタを探すときって、理論的に考えないですよね。その直感に従って、狙った場所をリサーチする。そうすると、よーく見ないとわからないけど、確かに何かいるんですよ。
なるほど。そんな感覚なんですね。
藤原研究者って左脳で研究しはじめると、そういう感覚が鈍ってしまいがちなんですよね。誰かがこんな論文を書いていたからそのバージョン1.1を作るという方向性ではなく、私はまだ誰も知らない新たな発見をしていきたいんです。