13年ぶりの地元・御殿場は“宝物”だらけだった
田近さんが御殿場を盛り上げる活動に携わることになった経緯を教えてください。
田近私は地元・御殿場の高校を卒業した後、東京で観光の専門学校に進学し、その後東京の旅行会社や広告代理店で働きました。仕事は好きだったのですが、東日本大震災と30歳になったのを機に、地元に戻ることにしました。
地元に帰って感じたのが、御殿場には“宝物”がいっぱいあることです。でも、それをみんなあまり活かせていないなとも感じました。
宝物とは、どんなものですか?
田近地元に戻る車中でまず感じたのが、富士山の雄大さです。「富士山、でっかいなー!」と。この光景を、東京から1時間ほどの場所で見られるのは、あらためてすごい魅力だなと思いました。
武内私がキリンディスティラリーに赴任したのはまだ半年ほど前のことですが、当地に来たときは、まさに東京から1時間ちょっと運転したところに圧倒的な富士山が現れ、驚きました。そこは本当に、御殿場の絶対的なセールスポイントだと思います。
田近実際に御殿場を巡ってみると、富士登山の御殿場口には、富士山最大の側火山である宝永山や、富士山山頂の絶景を眺められる双子山、自然の神秘を味わえる自然休養林などもあります。
あわせて御殿場が抱える課題も浮きぼりになりました。まずは前述の通り、富士山麓ならではの“資産”が、地域の活性化にあまりつながっていないこと。御殿場といえばアウトレットが有名ですが、4つしかない富士山の登山口の1つがあることは意外と知られていません。それ以前に、御殿場に富士山があること自体を知らない人もけっこういます。
吉井昔は御殿場駅の周りには登山客が泊まる旅館がたくさんあったそうですが、今ではほとんどありませんよね。
田近そうなんですよね。賑わっていた当時の記憶があるからなのか、「御殿場には富士山があるから大丈夫」と思う人が多いんです。でも実際のところ、地域はそれほど盛り上がっていない。だから、まずはそういった考えをなくし、御殿場の名前とそこにあるものを、全国の人たちにきちんと知ってもらう必要があるなと。
御殿場に戻って以降は、この土地の自然を守り、継承していくという想いを胸に、森林整備の事業や、トレイルランニング大会「ウルトラトレイル・マウントフジ」の開催、富士山5合目で安全登山や環境保全の啓発・観光案内などを行うトレイルステーションの設置、アニメとタイアップしての観光PRといった取り組みに携わってきました。
キリンディスティラリーでは、これまで地域の環境や社会に対して、どんな取り組みをしてきましたか?
吉井キリンディスティラリーでは、ウイスキーはもちろん、ミネラルウォーターや「氷結」などチューハイを製造していますが、どの製品も「水」が一番の原材料となっています。つまり当社の製品は、富士のきれいで豊かな水に支えられているわけです。
そこで当社では以前より「水源の森活動」や「土に環る木森づくりの会」といった、水源の保全につながる取り組みにかかわってきました。2021年には、NPO法人と県、市と森林整備活動などを通して未来の子どもたちに豊かな森林環境をつなげる「しずおか未来の森サポーター協定」も締結しました。
さまざまな団体さまとつながりながら、地域の環境や社会に寄与する。そういった取り組みを通じて、当社の製品や蒸溜所に親しみをもってもらいたい。その一環として、田近さんからお声がけいただき、アコチルに特別協賛させていただくことになったんです。